〜深夜の大イベント〜 小田急線保存車深夜回送 #1
小田急には往年の通勤車両が何両か喜多見の車両基地に保存されていた。
初代車両のモハ1形や、初代地下鉄直通車両の9000形などだ。
当然車庫内の一番奥に眠っており、その車庫も屋根付き半地下構造であることから、屋外はおろか航空写真ですらその姿を見ることはできなかった。
しかし車庫容量の確保の観点と、近い将来小田急ロマンスカーミュージアム開業に伴い海老名のSE保存庫が開くことから、一旦喜多見から相模大野に輸送されることとなった。
保存されている車両は約2年間かけ、5回に分けて輸送された。
初回がHiSE。次にRSE。その次にNSE。さらに通勤車四種類を挟み、最後にモハ1形だ。
最も世間の注目を集めたのは最後の3つで、とりわけ筆者は通勤3車種に重きを置いて撮影した。残念ながら全車ないしは部分解体となってしまった車両が多く、残して欲しかったところではあるが、この経済事情のもとでは致し方ないのであろう。しかしやはり小田急の歴史的遺産があっけなく散っていく様は小田急ファンとしては心苦しいものがある。
今回は、通勤車両3種類が輸送された日の写真を紹介しようと思う。
内訳は牽引車として1253×6が先導し、デハ9001+デハ2202+デハ2201+クハ2670、といった組成である。
特に筆者が撮りたかったクハ2670が最後尾についてくれているというのは朗報で、現役時代さながらのスナップを撮れるのではと目論んだわけである。
走行区間がそこそこ長い上に、相当な期間レール上を動かしていなかったことを考慮しての速度制限のおかげで追っかけが効きそうな条件だった。
編成撮りもしたかったので複々線区間の高架を降りてすぐのところで一旦編成を回収し、町田駅へと急いだ。
到着するとすでにたくさんのギャラリーが詰めかけており、現場は混沌としていた。
人をかき分け、なんとか踏切の前までたどり着く。途中工事に阻まれ時間をロスしたことも災いし、すぐに踏切が鳴り出した。
踏切には保線係員が配置されており、なんども踏切が開くまでは踏切内に立ち入らないよう注意喚起をしている。撮り鉄のみならず一般人のギャラリーもこんなにいるようではこの対応も致し方ないのか。
目の前を先ほど撮影した車両が45km/hでゆっくりと通過する。もともとY制限のかかっている町田駅だからかはわからないが、ホーム入線後にノッチを入れて加速。踏切が開くやいなや、すぐに自分が予めマークした立ち位置に移動し、シャッターを切った。
(1253×6+デハ9001+デハ2202+デハ2201+クハ2670)
現役時代さながらに収めることができただろうか。
夢にも見なかった保存車両の本線走行。突如現れた機会を存分に堪能した。おそらく二度と町田駅の線路を2600形が走ることはないだろう。
修繕され綺麗になった姿を日常的に見れる環境、小田急電鉄さんには是非ともつくってほしいところである。
(2019.03.03)